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これなーんだ?

「あなたは会社で、6か月後からスタートする超重要な社長直轄BIGプロジェクトの責任者になりました。大きな会社ではありませんが、社長と直接仕事をするのは初めてでした。ちょっと気難しいことは周囲からもよく聞かされていて知っているつもりでしたので、緊張しつつも、よし、と思って、この更に1か月前から一生懸命勉強したり調査をしたりして、企画を作ってきました。

そして今日、左肩をクリップでまとめた分厚い企画書を、社長に見てもらおうと準備し、席で社長の到着を待ちました。

社長が部屋に入ってきて、イスにすわって少し落ち着いたのを見計らい、すっと立ち上がって企画書を社長の目の前に出しました。「あの、」と説明を始めようとしたとき、社長はその企画書を片手でがっしりと掴むと、一瞬、目を表紙に落としたあと、表情ひとつ変えずに座ったまま、横の窓からバサッと放り投げました。

「あ!」とほとんど声にもなりませんでしたが、投げられた勢いでクリップの外れた企画書の紙たちは、バラバラに散ってビルの下の道路へ舞っていきました。急いで階段を駆け下り、散らばった紙を一枚一枚拾い集めましたが、昨日の雨の水たまりに落ちたものもあり、到底読める状態ではなくなっていました。


すべて拾い終わって、少し混乱しながらも、「気難しいのは解っていた…」と言い聞かせながら、ゆっくり階段を上がって部屋に戻ると、社長はすでに出掛けていったあとでした。


次の日、「今日こそは」と気持ちを入れ替えてあたらしく企画書を印刷し直し、社長を待ちました。

「社長、」と笑顔でまた企画書を手渡そうとすると、社長は今度は手元を見ることもなく力いっぱい企画書を振り払って窓の外へ飛ばしてしまいました。心臓がドッと一瞬音を立てましたが、冷静なふりをして笑顔で階段を駆け下り、また一枚一枚紙を拾い集めました。部屋に上がるころには、また社長は出掛けたあとでした。


次の日も、その次の日も、あたらしく企画書を用意し、説明しようとしては投げ捨てられ、

拾い集め…。そんな日々が1カ月続きました。渡すタイミングが悪いのだろうか?と朝にしたり昼にしたり夜にしたり、暇そうなときにしたり楽しそうなときにしたり静かなときにしたりしましたが、結果は毎回同じでした。また、紙の色を変えてみようかとピンクの紙に印刷したり黄色の紙に印刷したりしましたが、道路に舞い落ちる景色が少し華やかになるだけでした。

いつも気遣ってくれる取引先のお偉いさんが、「どう?進んでる?」と声をかけてくれたので、「なかなか思うようにいかなくて、」と話すと、「気難しいからね、焦らずに」と言ってくれました。


状況は変わらないまま2か月が経ちました。

この間、数枚だけページをめくってもらえたり、すこし検討しようかと右手で持ったり左手で持ったりする様子はありましたが、やはり結果的にはポイと捨てられました。内容が悪いのか?と思いましたが、でも見たのは表紙とその次の2、3ページだけ。関係あるのかないのかは全く分かりませんでしたが、何度も内容も書き直しました。

社長は、他の仕事は進めているようでした。

周りの人にも聞いてみました。「うちの社長はこうしたらうまくいったよ」「うちの上司はこうだったよ」。色々な人の話を参考にもしてみました。


プロジェクトのスタートはどんどん迫ってくるので、とにかく今日もチャレンジしないわけにはいきません。決裁者は社長ですから、どうしてもこの企画書を見てもらわないといけません。1日1回では足りないので、今度は1日に2回、3回と様々な方法でチャレンジしました。

紙を拾い集めて階段を上がるとき、何度か苛立ちで叫び散らしそうになりました。拾わずにそのまま放置してやろうかとか、明日は出すのやめてやろうかとも思いましたが、でもそんなことをしても進まないので、また部屋に戻り、黙々と企画書をあたらしい紙に印刷しました。

気にかけてくれる取引先のお偉いさんの言葉が、違う聞こえ方をしてきます「その後どう?(もうすぐプロジェクトスタートの時期だ、急がないと)」。そうすると、「うまくいかなくて」と愚痴をもらす勇気もなくなってきました。どうにかしないと。何とか打破しないと…、「間に合わなくなる」。


ある日、心臓がキリキリなるのを億劫に思いながら企画書を手渡すと、なんの拍子になのか、社長は猛烈に読み始めました。

昨日までと何も変わらない、同じ紙の企画書です。」



・・・・・・・・・・・・・・


これなーんだ?というタイトルにしましたが、自身の離乳食チャレンジについてのお話でした(笑)

会社に置き換えると、こんな感じだな、と思いました。


困惑と焦りと苛立ちと無力感とあれこれとにかく自分とのせめぎ合いのような日々でした。それは、沸騰した頭がボンと弾けてしまうか、なんとか押しとどめるか、という久々のギリギリ感でもありました。

「でした」というのは、つい数日前から、お世話になっている保育士さんの手助けのおかげで無事飛びつくように食べるようになったからです。まだ波もありますし、これからもどんどん新しい課題が出てくるのでしょうけれど。


と、勝手に苦労した感になっていますが、こちらはまったく赤ちゃん目線が入っていないので、まあ本人からしたら「なんかよくわからんものを口に入れてこようとしやがる!!」と思っていたかもしれませんね。。。


…まあ何にしてももしこれが会社のお話だったら、絶対に何カ月も続けませんけどね(^-^;

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